特別養子縁組についての本「産めないから、もらっちゃった!」
スポンサーリンク
特別養子縁組という仕組みと問題
本自体の感想としては、親目線だけでなく、子どもの「あのときはこう思った」という内容もあり、とてもおもしろかった。涙あり、ぷぷっと笑える部分あり。ほとんどの日常は本当に「ふつう」の家庭の波乱万丈さ。そこがいい。特別養子縁組の子どもたちは不幸でかわいそうではなく、幸せにふつうに暮らしているんだと知れる良い本だった。もちろん事情によって異なるだろうけど、それは実親に育てられている子どもたちも同じこと。
望まない妊娠をしたとき、女性の多くは「中絶、もしくは無理して1人で育てる」という選択肢しか持たないと書かれていた。たしかにそうかも。養子縁組をするという発想自体がなかなか出てこない。
出産した赤ちゃんを証拠隠蔽のように殺害してしまったり、我が子を虐待して死なせてしまうまでに追い詰められる親も世の中にはいる。何よりも子どもの命を大切にするならば、特別養子縁組というシステムに頼るほうがはるかに良いと私は思う。
もっと普及するといいのに、と思うけど、なかなか難しいようす。
乳児院、児童養護施設の入所児童数は増えているのに、特別養子縁組の成立件数は90年代からほぼ横ばい、むしろ減っている。それは「いつか引き取りにくる」という親が多いため特別養子縁組ができないという理由があり、でも結局何年か経ち子どもを引き取ることなく連絡がつかなくなるケースが多いのだとか。連絡がつかないと養子縁組の手続きが進められない。そして特別養子縁組が可能な子どもの年齢は6歳まで。
なんという親都合の決まりなんだろう。子どもは血の繋がった親に育てられるのが1番という考えが元になっているとも書かれているけど、その暗黙の了解みたいなものが世の中の「育てられない母親」を苦しめているとも思う。
「子どもは血の繋がった親に育てられるのが1番幸せなのに、私は手放そうとするなんて、なんて最低な母親だ」と。最低な母親だと人から思われることもこわい。だから誰にも相談できない。悪循環。特別養子縁組という道もあると知っていたら、こういう悪循環がなかったら、救えた小さな命があるかもしれない。
うさぎママも本の中でこう言っている。「いちばんいいのは、自分で産んだ赤ちゃんを育てること。その次は、よその人が産んでくれた赤ちゃんを育てること」
子どもにとっても、いちばんいいのは実の親に育てられることは間違いないと思う。ただそれが不幸であれば意味がない。いちばん大切なのは子どもが幸せであること。幸せに生きられること。それは血の繋がりよりもっともっと大切だと思う。
本はおもしろかったけど、どうにかならんもんかぁ、とどんよりする気持ちが広がった。デリケートな問題であることは重々承知だけど、とにかく特別養子縁組の制度がもっと認知されてほしい。