「お父さんとヤッてんねン」
殺ったのはおまえだ―修羅となりし者たち、宿命の9事件 (新潮文庫)
読んだ。
激しく暗い気持ちになった。でも私は殺人犯の生い立ちや環境を知ることに興味を持っている自分を知っている。ヒトの心、脳、環境が作り出す犯罪。
それを少しでも知るということは「なぜ人は人を殺すのか」「どんな環境が犯人をつくりだしたか」という疑問に対するヒントが隠されている。ただ、私が興味を持つ理由は、そんなキレイな理由だけではないように今回初めて感じた。
自分よりも不幸な運命を背負った犯人の人生・環境を知ることで安心感を覚えたいのかもしれない。「自分はこうなっちゃダメ」と思う反面、「ああ、自分はまだヒトとして大丈夫なんだ」という安心感を持ちたいのかもしれない。
今まで自分にも隠してきたこの理由を、初めて突きつけられたこの本は、ピックアップされている事件の地域が関西周辺のものが多いからだ。出てくる地域の名は全てその地をリアルにイメージできる。
このことにより、本の中にいる「その人」たちは「物語の登場人物」ではなく、私がよく知る土地で生きた「あの人」たちに変わってしまった。
殺人、犯罪は遠い遠い世界の物語ではないという当たり前な事実を、イヤというほど思い知らされた。中学までの友達、高校の友達、女子大の友達、アメリカで出会った友達、そして社会人以降の友達。おもしろいほどに、歴然と違う。「人間の種類の違い」を痛感している私は、この本の解説を書かれた島村洋子さんにものすごく共感した。
人間に種類があることや、友達を選ぶという言葉に異常に反応する人がいる。私もその1人だった。偏見・差別は道徳的にいけないことだ。ただ人間には自分の環境を選ぶ権利がある。それはつまり付き合っていく人間の種類を選ぶ権利があるということだ。差別・偏見をなくすことは、人間が自分の環境を選んではいけないということにはならない。
選ぶ以上に難しいがやるべきことは、今いる環境に不満がある人はそれを変えるという行動であると思う。実際に私は中学までの友人と今ほとんど連絡をとっていない。選んだつもりはなかった。ただ、「このままじゃダメだ。」といつも思っていた。環境への怒りの矛先はいつも「まだ出ていけない自分の年齢」であった。出ていける年齢になった瞬間に、私はそこを「出た」のだ。距離的にはほとんど変わりない、1時間以内に行ける距離だとしても、「出た」という事実が私を変えた。
犯罪が起きるような地域でなくても、自分に合わない土地というのはあると思う。それが生まれ育った土地だと非常に悲しい気もするが、仕方ない。その後、私の意志は関係なく事実上実家もなくなった。帰る場所がないなら、つくればいい。新しい家族は自分が選べるのだから。
殺人者が生きる環境のキーワード
殺人を犯してしまうニンゲンは生まれながらに決まってしまうのか(脳、性格、運命etc)、それとも、育つ環境なのか。これは人類の最大のテーマかもしれない。ただ事件にはいくつか共通したキーワードがある。
暴力、近親相姦、アルコール中毒、日の当たらない家、食卓を囲む風景のない家庭
家庭を持ち、子供がいつか犯罪者になるのではと恐れている大人はこの日本に何人いるのだろう。最低でも上記の5つは子供たちに与えないことは約束しなければいけない。
先日読んだ「精神科医が教える 1億稼ぐ人の心理戦術*1」では最後の3つ、お酒は毎日飲まないこと、太陽に当たること・家族で食卓を囲むことはビジネスマンにおいても非常に大事なことと書かれている。
子食い悪魔は最大の犯罪、黙認も犯罪である
近親相姦のいくつかの事例を知って驚くべきことは、子供から勇気ある衝撃の告白をされても、母親が何もしないケースが多いことだ。直視したくない現実、自分が選んだ男性が人間のタブーを犯しているという事実、自分のカラダから生まれた我が子が汚れてしまった感覚、それらが絡み合って思考を停止させてしまうのだろうか。。。女として、母親として最も傷つくことかもしれない。ただ黙認も共犯と同じだと認識しなくてはいけない。警察の女性相談窓口に相談できるそうです。
「お父さんとヤッてんねン」、こんな台詞を12歳の女の子に吐かせるような家庭が、この国から、この世界からなくなることを切に願う。
殺ったのはおまえだ―修羅となりし者たち、宿命の9事件 (新潮文庫)
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